実務者を悩ませる 「商品・役務(サービス)が似てるかどうか」問題

2016年06月01日 よく分かる解説 スタッフブログ 判例(審判例)情報 最新情報

みなさま、こんにちは。
横浜 の特許事務所 IPWIN の弁理士、保屋野でございます。
実務者を悩ませる
「商品・役務(サービス)が似てるかどうか」問題があります。
商標を出願する際、
文字や図形だけを出願するのではなく、どの商品やサービス(役務)に使うのか?
という指定をしなければなりません。
例えば、「A」という商標があった場合、
「腕時計」に使うのであれば、「腕時計」を指定します。
したがって、「自動車」だとか「花」だとか「建設工事」といった、
まったく別の、類似しない商品やサービス(役務)については、
他の人も「A」を使うことができるし、商標登録することもできるのです。
一方、「置き時計」は「腕時計」に類似するので、他者が「A」を使うことはできないのですね。
この商品やサービス(役務)が類似するかどうか?の判断を主観で行うと、
人によってバラツキが出てしまいます。
そこで、審査する特許庁は「審査の基準」を設けて、
この商品とこの商品は類似と“推定”しますよ、というリストを公開しています。
具体的には、個々の商品に[01A01]というようなコードを割り当てて、
コードが同じものは類似としています。
実務者としても、このリストを大いに参考にして、
お客様への説明に活用しています。
しかしこの“推定”というのがクセモノです。
覆る可能性を示唆しています。
実際の似てるかどうかは、商取引や経済界の実情の移ろいにより左右します。
したがって、コードを信じ「類似してない」と考えて出願&登録を受けたのに、
後から権利が無効になってしまう、、
こんなこともあり得るのですね。
実際のケースで、「Dual Scan」という商標の事件があります。
O社が「Dual Scan」の商標について、「体脂肪測定器,体組成計」を指定して出願。登録を受けました。
「体脂肪測定器,体組成計」に割り当てられたコードは[10D01]。
その後、T社が同じく「Dual Scan」の商標について、「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」を指定して出願。
なんだかO社のと似ている商品だけど、
「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」に割り当てられたコードは[10C01]。
コードが違うし、医療用で使われる体組成計とは別物だしOKでしょ!
と思ったら案の定登録になりました。
O社はこれはおかしい!と異論を唱え、
T社の登録を無効にする判断を、特許庁に求めます。
一度した判断を覆すのは特許庁のプライドが許さない…(?)
ということでO社の要求をはねのける。
「似てないったら似てないんだよ!」
あきらめないO社は今度は裁判所に特許庁の判断の取消を求めます。
その結果…
「現状では、一般消費者も医療用の体組成計や体重計を入手できるよね」
「学校やフィットネスクラブ等で、医療用の体組成計を目にすることもあるでしょ?」
「医療従事者でさえ、医療用と家庭用の区別を意識するのは難しいよ」
ということで、
「両者は紛らわしい類似の商品!」と判断されました。
上告の有無は定かではありません。
確定ではないのですが、今のところ「類似」ということになっています。
正直に申し上げると、個々のケースで事前にこのような結果を予想するのは非常に難しいです。
なので、多少厳しめに見積もって、疑わしいものがあれば、
「登録されても、後に類似と判断される可能性があるので、別の商標にした方がいいですよ」
と申し上げ、
他社が出願・登録していない商標をお考えいただくこともあります。
ちなみに、少し特許庁が悪者みたいにみえますが、そうではありません。
年に十数万件も出願される中で、コードを頼りに画一的な判断ができないと、
審査が滞ってしまうので、仕方がないのです。
それだけ、現代における商取引環境の変化のスピードがすごい、ということなのです。

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