「四次元ポケット」が登録を取り消された理由

2016年03月16日 よく分かる解説 スタッフブログ 判例(審判例)情報 最新情報

みなさま、こんにちは。
横浜 の特許事務所 IPWIN の弁理士、保屋野でございます。

さて、ドラえもんといえば、あの“ひみつ道具”が出てくる「四次元ポケット」ですよね。
ポケット自体は、いくらでも物が入る収納道具ですが、
頭の中でイメージすると、内部のコンピューターが格納された“ひみつ道具”を探り出してくれます。
あんなポケットがあればいいのにな~なんて、思った方は多いのではないでしょうか?
「スペアポケット」という、内部で空間がつながった、同型・同性能のポケットもありますね。

(テレビ朝日HPより引用)

(TV朝日HPより引用)

(テレビ朝日HPより引用)

(TV朝日HPより引用)

 

その「四次元ポケット」ですが、ドラえもんとは関係のない第三者が商標出願してしまい、
いったんは商標登録を受けてしまいました。
審査で拒絶理由通知を受けることもなく、すんなりととおってしまったようです。

「四次元ポケット」といえば「ドラえもん」。
「ドラえもん」といえば「四次元ポケット」。
なのに、無関係の第三者に商標権を与えるなんて、特許庁はおかしいじゃないか!ということで、
ドラえもんのキャラクターライセンス事業を行う小学館集英社プロダクションが、
その商標登録(第5733579号)に対する登録の異議を申し立てました。

そして、無事に登録が取り消されることになりました(異議2015-900124)。

いったん登録になった商標を取り消せる?

いったん登録を受けたら安泰なんじゃないか、
苦労して商標権を取った人なら、誰しもそう思いたいところです。
あるいは、商標を取ろうと思ったけど、先に登録されているからあきらめよう。。
そんな方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実は商標登録を取り消したり、無効にしたりすることは、
それに値する理由があれば、可能なのです。

なぜかと言いますと、
審査する人も人間、いくら審査のエキスパートである審査官であっても、
判断を誤ってしまうこともあるからです。
一方で、一度成立してしまった、本来登録を受けるべきでない商標を、
そのまま独占権として認めることは、妥当ではないからです。

もちろん、むやみに登録の取消・無効を認めると、
今度は商標権者にとって安心できない制度になるので、
取消・無効が認められる“理由”は限定されています。

では、今回はどんな理由で登録取消を認められたのでしょうか?

「四次元ポケット」取消の理由

まず、「四次元ポケット」が、「ドラえもん」の漫画やテレビアニメ等で長年登場してきた実績が証明され、
需要者の間に広く認識されていることと、ドラえもんのひみつ道具である他に意味を有しない造語であることが認められました。

その上で、この登録商標で指定された商品・役務が、
「業務用テレビゲーム機用プログラム」や「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル」「電子出版物」「デザインの考案」「電子計算機用プログラムの提供」といったものであり、
多種多様なキャラクター商品が展開されている現状を見ると、
やはり「ドラえもん」を想起・連想してしまう、との判断が示されました。
つまり、「ドラえもん」に係る権利を有する企業が扱う商品やサービスであるかのように、
需要者が出所を混同してしまうおそれがある、とのことです。

もう1つ、ドラえもんの「四次元ポケット」のことは商標権者だって知っていたはずで、
「ドラえもん」の知名度(周知性)や魅力(顧客吸引力)に便乗して不当な利益を得ようとしたのだろう、と推認されてしまいます。
そんな商標は、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、
登録を認めることは到底容認できないから、公序良俗に反するものだ、
と結論が出たのです。

こうして、商標「四次元ポケット」は、取り消され、
権利は消滅(四次元ポケットの中にもない)したのです。

漫画やテレビアニメで人気のキャラクターや、そこに頻繁に出てくる言葉は、
ファンなら誰でも認める、大切な財産です。
それにあやかりたい気持ちは分からなくもないですが、
商標の魅力や知名度は、自分の努力で築いていくことが必要ですね。

ちなみに「四次元ポケット」の言葉、
Google検索すると、ドラえもんと関係のなさそうなところで使われていますが、
これは放置しても大丈夫なのでしょうか?
もしかしたらこれをきっかけに、不正競争防止法による対処や、
あるいは小学館集英社プロダクションが、きちんと商標登録した上で権利行使するかもしれませんね。


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